

2009年1月16日
青森県の食堂文化の深さについては、このコラムでも数多くのお店を通じて紹介しているところで、お店を訪れる度に、料理総合力の高さに驚くばかり。ただ、自分が住んでいた神奈川や東京と比較して「そういえば…あのジャンルの店がないなぁ」と思っていた。
そのジャンルとは、洋食に強い食堂。決してビストロのように気取ったものではなく、洋食堂。
東京には、このジャンルの有名どころとして、「キッチ○ジロー」とか「キッチン○海」といった大御所がある。一方、青森の場合は和ものを中心とした食堂が数多く、これは未開のジャンルといってもおかしくない。
で、洋食堂の存在を意識して店を探してみると、意外に早く発見することができた。しかも、三内丸山遺跡に向かうメインストリートの一つ、浪館通り沿いに。
極めて、民家的な外観ではあるものの、道路沿いにはしっかりと「中央軒」と書かれた赤地の看板が掲げられており、入口には「営業中」のプレートの姿も確認。
ということで中に入ると、左手にはメニューサンプルがぎっしり詰まったショーケースの姿。揚げ物、ソテー、カレー、ナポリタン…メニューの多さもさることながら、驚いたのはその値段。500円台からしっかり食べられる、ありがたい価格設定になっている。ただ、丼ものやラーメンも用意されており、洋食だけのメニュー構成になっていないところが青森らしさか。
で、男2人で入店したこの日。注文したのはエビフライ定食とビーフステーキ定食。特に、後者には語感の妙からか不思議な魅力を感じてしまう。
注文した後、自分の視線は赤いレンガで囲まれた厨房に向かった。コック帽が似合うご主人は、手に馴染んだフライパンを片手に、オムライスを作り、生姜焼き定食を作る。そんな姿を見ていると時間を忘れてしまう。
熱々に仕上がったオムライスや生姜焼きを頬張るお客さん。傍目に伺えるそのボリュームはかなりのもの。ちょっとだけ、心の準備が必要だと思った。
20センチ以上のエビフライが2本、最初に運ばれてきたのは、エビフライ定食。大きくて太い2本の主役がドンと鎮座した定食は、これぞ洋食堂らしさに満ちた一品。
あまりの大きさに、どうやって食べたらいいのだろうかという顔をしていた同行者も、ナイフとフォークを片手にし、覚悟を決めたかのようにガシュっと頬張る。すると耳に飛び込んできたのは、サクッという軽快な音。どうやら、かなり満足の様子。
それを我慢できずに少し分けてもらうと、「音は旨さを表すんだなぁ…」と思ってしまった。なので、身しか食べない同行者が残した尻尾も食べて、頭も食べる。ここが旨いエビフライこそ旨いエビフライだと思うのは、自分だけだろうか。
これは、ビーフステーキというよりも、そして、エビフライ定食と一緒に運ばれたサラダが、実は自分のビーフステーキ定食のサラダだと気がついたとき、厨房の奥から肉の香りが近づいてきた。
これはすごい!牛の形をした鉄板の上で、ジュージュー焼かれた牛肉。その上には、久し振りにその姿を確認したレモンバター。更に、ニンジンのバターソテー、インゲンのソテー、そしてケチャップナポリタン。いやぁ…このシチュエーションはたまらない。
ナイフで肉を切り分けると、その下には玉ねぎを発見。早くも肉汁を吸って旨そうな色合いになっている。決して贅沢な肉の味ではなく赤身のしっかりとした味。この、ルックスを含めて懐かしさを感じさせる味は、ご飯の友にうってつけ。
だから、「ビフテキ」という言葉が真っ先に浮かんだ。自分は、リアルタイムのビフテキ呼称世代じゃないが、たぶんこんな感じだったのだろうと思った。鉄板で焼かれたナポリタンも時間と共に香ばしさを増し、ニンジンのソテーも甘口。そう、自分はこういうのが食べたかった。

※メニューは一例です。