

2008年10月24日
美味しい料理を作り出す「こだわり」「こだわり」という言葉。それは、色々なお店を巡る際に、自分が一番大事にしている言葉。
例えば、それは「素材にこだわる」、「調理方法にこだわる」、あるいは「お店の雰囲気にこだわる」、「あえて、こだわりを捨てることがこだわり」なんていうのも面白い。そんな、色々な形のこだわりが、一つ一つの皿に宿ってこそ美味しい料理になる。
例えば、この「らあく」というお店。外観はまるで昭和の名残を感じさせるドライブインのような佇まいだが、お店に近づいてみると、店頭には使い古されたタイポグラフィで記されたメニューではなく、毎日変わるランチセットのラインナップが丁寧に書かれた、黒板の姿。店員さんが作った手書きPOPがついた書籍に魅力を感じるのと同じように、自分はこのこだわりに弱い。
ゲーム喫茶のように卓上ゲームも置かれた店内に入り、黒板から選んだランチセットは、「七戸産赤卵を練りこんだ細めの手打ちパスタ・秋刀魚とルッコラのオイルソース」。
まずは、前菜。サラダ、テリーヌ、そしてバゲット。前菜ということもあって、一見シンプルな3品だが、サラダを口にした瞬間にガラっと印象が変わった。瑞々しい地物の葉物の活き活きとした味と、大西ハーブ農園産の濃厚なハーブの味が、ブレンドにこだわったドレッシングによって際立ち、非常に重厚な味になっている。「野菜=口直し」的なイメージになりがちなものの、これはまったくの別物だ。
また、豚肉の色々な部位を使ったテリーヌも、ほどよい弾力を楽しむに比例して口の中には肉のエキスが広がり、そこにハーブのすっきりとした風味や香りが加わることで、食後感が軽くなる。そして、菜種油を使ったバゲットで口をフラットにした後、もう一度二品を口にする。すると、印象は深まるばかりだ。

次に、メインディッシュのパスタ。手打ちの平打ちパスタ(タリオリーニ)に練りこまれた七戸の赤卵は、地元の食材を可能な限り使うというこだわりによるもの。丸麺ではなく平麺なので、そばで言うところの角が立った食感。そこに、細かく刻まれたニンニクやドライトマト、オリーブ…がたっぷり入ったオイルを絡めて、少し大きめにカットされた秋刀魚をパスタで巻き込めば、あとは口に運ぶだけ。
塩を振って一夜干しにしたサンマからは、余分な雑味が抜けてしっかりと味が引き出されている。和イメージの食材が持つ旨さを洋のスタイルに融合させ、これをたっぷりのルッコラのさわやかで力強い味が包み込む。正に、色々なこだわりが詰まった一品。

食後のデザートは、シンプルなカボチャプリン。でも、一口食べてその味に驚いた。苦味の効いたカラメルと、なめらか仕立てではなく、素材の繊維感がしっかりと残るプリンとの相性が、あまりにも良い一品だったから。正直、これを単品で提供してほしいぐらいに思えた。
シェフは、東京の色々なお店で経験を積み、色々な世界のこだわりを目の当たりにしてきた。だから、その世界ならではの色々なこだわりの形を知っていて、色々な見せ方を知っている。

そして、青森というこだわりの食材がたっぷりの舞台で、店舗の外観からは想像もつかない、地産地消の味を作り出す。このストーリーこそが一番のこだわりに違いない。
そんなこだわりの味に会ってから、ある種、生きることにこだわり抜いた縄文人の息吹に会いに行くのも、きっと悪くないと思う。

(食事は11:30~、ラストオーダーは21:45)
※11:30~15:00と18:00~21:00は、特製ランチ・ディナーメニューあり。
(特製ランチ・ディナーメニュー提供時間帯に提供)
※メニューは一例です。