

2010年2月9日

縄文宵待ちフォーラム
縄文大祭典の宵待ちフォーラムでイギリスのセインズベリー日本藝術研究所所長のニコル・クーリジ・ルーマニエールさんが、日本ではMANGAにJOMONがしばしば取り上げられるのが興味深いという話をした。マンガやアニメがいま世界の注目を集めていることがわかるが、それを縄文という切り口で見る発想は私たちにはないものでおもしろかった。
ふつう、考古学遺跡では「事実」に重点を置いた演示をしている。しかし、三内丸山遺跡はそれだけでなく、イメージを刺激する演示がおこなわれているのが特徴である。その理由の一つは、エジプト、ギリシャ、インカなどの遺構は石でできているのに、三内丸山では穴ぼこばかり、保全がほぼ不可能であり、かつての木造建物の姿は復元する以外に方法がなかったことがある。

お月見コンサート(PHOTO 木村恵一)
ところがそれが市民の興味をかき立てたらしく、縄文人の装い、食、音楽などに関するイベントやフォーラムがさかんに開催され、多くの人が集った。今回の縄文大祭典も「縄文人になってお月見をしよう」という五感駆使型の総合イベントであった。イメージが主体となっているのだが、専門的な「事実」がしっかりと提供されていることを忘れてはならないだろう。そのために、マンガはファンタジーだけではなく、学問的にも通用するほどの扱いになったことはニコルさんの指摘するとおりである。
先日、エストニアでおこなわれたシンポジウムに参加したとき、「自分の育った地、住んでいる地への思いは世界の人々に共通していること、その場所で歴史が形成され、それを文化財保護、環境保全、地域おこしの対象にする動きがさかんになっていること」が話題になっていた。考古学遺跡も人々の熱い思いに支えられるのである。

三内丸山遺跡 平成6年当時現地説明会の様子
「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」の世界遺産暫定リスト入りは、これまでの例が今ある景観を主体に進められていることに対して、真の価値は地下に埋まっていること、それこそが強調するべき点である。「地下に真実、地上にロマン」、三内丸山遺跡を全国に知らしめたころの関係者の合言葉だったことを思い出す。
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国立民族学博物館名誉教授
1939年香川県生まれ。カリフォルニア大学大学院博士課程修了。オーストラリア・アボリジニなどの民族考古学的研究を行う。
著書『縄文学への道』(NHKブックス)、『森と生きる』(山川出版社)など多数。

美術文明史家、多摩美術大学教授。
1952年生茨城県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修了。ダブリン大学トリニティ・カレッジ留学。
著書『ケルト/装飾的思考』(筑摩書房)で日本でのケルト芸術・文化史理解の火付け役となる。日本・ヨーロッパ・イスラムの装飾美術論も展開。
