○小学校から中学校にかけて、子どもは急速に世界を広げ、成長していきます。この時期は、親としても、子どもの変化に驚き、とまどうことも多いでしょう。
○この家庭教育ノートは、そのような小・中学生の子どもを持つお父さん、お母さんに向けて、家庭での教育やしつけに関して、それぞれの家庭で考えていただきたいことをまとめたものです。
○ぜひ、お父さん・お母さんにお読みいただき、子育てのヒントとしてください。
○子どもを育て、その成長を見守ることは大変なことですが、大きな喜びや楽しみをもたらすものでもあります。このノートが、その一助となれば幸いです。

目    次

1.家庭とは?   子どもが家で身につけたことは、生涯、ずっと生き続ける。
2.しつけ・子どもの非行         正しいしつけが子どもへの最大の贈り物かも。
3.家庭でのルール      ルールを守るものは、ルールに守られる。
4.思いやり      愛は、家庭で教わらなかったらよそで学ぶのはムズカシイ。
5.個性と夢      人は夢を育て、夢は人を育てる。
6.ゆとり           遊びが子どもを大きくする。


1.家庭とは?

子どもたちのいちばんの願い、それは何だと思いますか?

 「あなたの家庭にもっと望むことがあるか」と子どもたちに聞いたところ、どの年代の子どもでもいちばん多かった答えは「家族のみんなが楽しく過ごす」でした。そんな当たり前のことを子どもたちが願わざるを得ない現実を、親として真剣に受け止めたいものです。
 必要なモノさえ与えていれば子どもは育つ、と思えた時代もありましたが、いまや楽しい家庭は家族が意識的に協力し合わなければなかなか得られません。子どもにとって心安らぐ居場所になっているかどうか、家庭を見つめ直してみましょう。

  安らぎのある楽しい家庭をつくる

自分を大切にできないならば、子どもを大切にすることもできない。

 子育ては大事ですが、一日中、わき目もふらずに集中しては疲れてしまいます。親のイライラは、子どもにも伝わっていくものです。
 大切な子育てだからこそ、自分の時間をつくり、心を健康に保つことが大切です。夫婦で助け合ったり、育児を手伝う仲間や仕組みを活用したりして、リフレッシュする時間をつくりましょう。
 親が幸せで笑顔でいる家庭でこそ、子どもも幸せを感じられます。

  親がまず幸せになる

話せばわかるとは限らないが、話さなければもっとわからない。

 話さなくてもわかり合える関係が、今とても難しくなっています。夫婦の間、親子の間での会話を増やしていくことが、家庭づくりのすべての基礎になります。ほんとうは夫婦でも親子でも何でも話せる仲でありたいものです。
 会話を増やすには、全員で夕食をとる日を決めるなど、できるだけ一緒に食事をし、お互いにその日にあったことを話すとか、朝のあいさつをする、子どもに家事を頼む、一緒にスポーツをしたり地域のボランティア活動に参加したりする、などの工夫をすることが大切です。
  
     会話を増やし、家族の絆を深める

子育ては母親の仕事、そう思ってるお父さんは要注意。

 家庭での父親の存在感が薄くなり、社会の善悪のしつけがおろそかになってきたと言われています。父親は、基本的な考えは共有しつつも、母親とは違った視点で子育てをすることで、密着しがちな母子関係を修正していく役割があります。この場合、父親が自然に参加し、その影響力を発揮できるように、両親はお互いにパートナーとしての配慮をすることが必要です。母親は子どもの前で、父親をけなしたり、見下したりしないように気をつけましょう。父親も、子どもの前で母親をどなったりしないようにしましょう。

  夫婦で一致協力して子育てをする

いっしょに食事をするって、ほんとはすごく大切なのかも。

 朝食をとらない子どもが増えています。また、生活習慣病につながる食生活の偏りも問題です。
 食生活は、体の健康だけでなく、心の成長にも深くかかっわっています。一緒に食べる楽しい食卓や親が手間をかけて作った食事は、親の愛情を自然に子どもに伝え、そこでの満足感・信頼感は子どもの心を明るく強いものに発達させます。
 栄養バランスのとれた食事を心がけ、一緒に食事をする曜日を決めるなどの工夫をして、できるだけ家族そろっての食事を習慣にしましょう。

  家族一緒の食事を大切にする

前向きな親の姿は、きっと子どもに届いてる。

 ひとり親家庭では、親が働きながら子育てをするため、ゆっくりと子どもと接する時間が少なくなりがちです。しかし、子を思い、より良い将来に向かって努力する親の姿は、しっかりと子どもたちの心に響いているはずです。
 また、様々な悩みなどは、一人で抱え込まず、親類や友人の協力を得たり、地域の相談窓口や子育てを応援・サポートしてくれるシステムなどを積極的に活用したりしましょう。

  いつも自信を持って子育てをする

これまでの常識では通用しない問題が増えている。

  子育ての不安、いじめや不登校などで悩みを抱えたとき、親は、配偶者や親・きょうだい、友人などに相談することが多いのですが、それだけでは解決できないときもあります。社会の急速な変化や家庭の多様化から、これまでの教育や子育ての経験だけでは適切な助言が難しい問題も多いからです。そういうときは迷わず専門家に相談しましょう。
 学校の先生、スクールカウンセラー、家庭教育相談、教育センター、警察の少年相談窓口、児童相談所、精神保健福祉センターなど様々な相談機関があります。それぞれの特色を知り、相談内容にふさわしい機関を選び勇気を出して相談してみましょう。

    時には専門家の知恵を借りる

子どもが相談したくなる親はどこが違うんだろう。

 人は愛され理解されたがっている存在です。理解されないときの不満がたまるとキレることもあります。突然子どもがキレたとき、本人も親も理由がよく見えず、怒ったり苦しんだりしますが、理由はあるのです。日ごろから相手の話をじっくり聞く、同じ目の高さで考える、深い関心を払う、といった姿勢を親が身につけることで、子どもは親に愛されている実感を得ることができます。
 子どもは愛されていると感じるとき、安定した気持ちで問題に立ち向かうことができます。そして、不必要に攻撃的にならず、他者や問題を受け入れることができ、大きく成長できるのです。

  子どもが愛されていると実感できるコミュニケーションをする

2.しつけ・子どもの非行

ずいぶん厳しく叱られたけど、今ではそれに感謝しています。

 いけないことをいけないことと思わない子どもたちが増えています。
 「自分さえよければいい」「ルールを守らない」という人は、人から信頼されず、キラわれます。間違った行動は本気で叱り、その場で正すことが本当の愛情です。「自分の子だけよければよい」という考え方(自子主義)はやめ、叱るときには何がいけないのか、理由をきちんと伝えましょう。また、気分や感情に流されず一貫性を持って叱ることも大切です。
 そして、親自身もルールに反することはしないように気をつけましょう。子どもに信頼され、尊敬される親であり続けるためにも。
 
  間違った行いはしっかり叱る 

感情にまかせて叱ることとしつけとは違う。

 しつけは大切ですが、しつけなくては、という気持ちから、ついたたいてしまい、その行為に歯止めがきかなくなってしまう場合もあります。子育てのイライラやストレスが、子どもへの愛情を忘れさせ、叱るという行動にすりかわっているのではないでしょうか。
 上手な叱り方のヒントは、「叱られる側」の子どもの立場にもなって考え、「そう言われたら子どもはどう感じるだろうか」「子どもはどう受けとめるだろうか」、まずここから考えてみましょう。
 子どもの体や心を傷つけるような叱り方は、教育的な効果がないばかりでなく、児童虐待につながる可能性もあります。

  「叱られる側」の子どもの立場も考えてみる

いきなりに見えてもサインは出ている。

 「普通の子」の「いきなり型」非行が増えていると言われています。しかし、一見「普通の子」でも、必ずその前にサインを発しているものです。それを親が見逃したり、気にはなっても目を背けたりしていることが多いようです。
 サインに気付いたときには、夫婦でじっくり話し合い、子どもと会話を交わす糸口を見つける努力をしましょう。子どもの問題行動には目をそらさず、必要なときには、勇気を出して、家庭教育相談、教育センター、警察の少年相談窓口、児童相談所などの相談機関や学校の先生・スクールカウンセラーに相談しましょう。

【非行の前にあるサインの例】                                      
              心身の不調を訴える
              些細なことに過度に興奮する
              周囲の人に攻撃的になる

  「いきなり型」非行の前にあるサインを見逃さない

いうことをきかないのは、子どもの自立が始まった証拠。

 思春期や反抗期がくると、体の成長に心の成長が追いつかず、ちょっとしたことで有頂天になったり深く傷ついたりします。また、異性や性への興味が高まる、自我が強まり親や先生がうっとうしくなる、秘密を持つなど、成長という変化の中で心が最も不安定になります。ですから、子どもがいうことを聞かなくなっても、いたずらに動揺したり抑えつけたりする必要はありません。子どもの自立や親離れが始まった証拠です。むやみに干渉し過ぎず、子どもの力を信じてあたたかく見守りましょう。しかし、それは腫れ物に触るような接し方とは違います。冷静に子どもの姿を見つめ、常に会話を重ねる努力をしましょう。

  思春期の子どもを理解し、逃げずに見守る

酒・タバコぐらいは大したことではない、と思ってませんか。

 20歳までは、心と体の成長のために特に大切な時期です。未成年者は急性アルコール中毒になりやすい、未成年でたばこを吸い始めた人は、大人になってからの人よりも肺ガンにかかりやすいなど、子どもの飲酒・喫煙が多くの悪影響を及ぼすことが医学的に明らかになっています。また、飲酒・喫煙は子どもの生活の乱れを招き、薬物乱用などの更に危険な行動につながる入口でもあります。
 親は、子どもの飲酒・喫煙から目を背けたり、大したことはないと許したりせず、きちんと注意し、法律で禁止されていること、身体に害があることを、子どもが納得するようによく話し合いましょう。

  子どもの飲酒・喫煙を許さない

万引きはゲームじゃない、犯罪だ。

 「スリルや刺激を求めて」「ゲーム感覚で」「仲間がするから」といった理由で万引きなどの非行をする子どもたちがいます。しかも、その多くは「悪いことをしている」という罪悪感がほとんどありません。
 親は「悪いことは悪い」とはっきり言い、万引きや自転車泥棒などはれっきとした「犯罪」であることを子どもにしっかり理解させましょう。
 また、子どもが万引きなどをしてしまったときには本気で叱り、子どもとともに迷惑をかけた人にきちんと謝るなど、子どもが心から反省し、二度としない決意をするように促しましょう。

【刑法犯少年の補導人員】
約14万2千人(平成11年、前年比10%減)
                                          少年人口千人あたり約16人   
  万引き、盗みなどの非行を許さない

「覚せい剤には手を出さない」と、子どもが自分で決めるために。

 覚せい剤などの薬物の乱用が子どもたちの間に広がっています。その背景には、薬物が簡単に手に入るようになったことに加えて、子どもたちが薬物を「エス」「スピード」と軽く呼んでいたり、「ダイエットに効く」と誤解するなど、薬物の怖さを理解せず、罪悪感が薄くなってきていることなどが挙げられます。
 売る側は、都合のいいことしか言いません。親は、薬物は一度使うだけでも犯罪だという毅然とした態度をとることが大事です。そして、親子で、薬物はやめられずに依存症になってしまう危険があること、心身そして人生を崩壊させてしまうこと、本人や周囲の人間の苦悩はとても大きいことなどについて話し合うようにしましょう。どんな誘惑があっても、親子の信頼関係が子どもを自ら守らせることにつながります。

  薬物の危険性を親子で理解する

「援助交際」なんて言葉にはだまされない。

 「援助交際」という名の売春が増えてきています。売春をブランド品の購入などのための小遣い稼ぎだと割り切る考え方には、毅然として「いけない」と言わなければいけません。
 また、行動の背後には、メンタルな問題もあると言われます。学校や家庭に居場所を見つけられない寂しさなど内面のストレスや葛藤に目を向けていくことも大切です。
 子どもに関心を持ち、話を聞き話をしましょう。その際、「援助交際」は売春であり違法であること、薬物や暴力団などの犯罪に巻き込まれる危険があること、望まない妊娠や性感染症を招くおそれがあること、将来の人生の心の重荷になること、などに気付くように働きかけましょう。

  「援助交際」をさせない

子どもはSOSがうまく言えない。

 いじめや不登校につながる悩みなど、子どもが心の問題を抱えたとき、それは、しばしば身体的なサインとなって現れます。
 腹痛、吐き気、下痢、食欲不振、めまい、頭痛、発熱といった症状や過食、拒食、不眠、といった行動など様々なサインがあります。サインに気付いたら、病気だと心配するだけでなく、心の問題が背景にないか考えましょう。
 「気のせいだ」「わがまま」「ずる休み」というような言葉で片付けず、様子をよく見、話をよく聞き、理解しようとする姿勢が大事です。
また、かかりつけの医師や学校の先生にもよく相談してみましょう。
【心理的な問題による身体・行動のサインの例】
身体:腹痛、吐き気、下痢、食欲不振、
      めまい、動悸、頭痛、発熱、倦怠感  
行動:過食、拒食、不眠、ヒステリー 
  子どもの身体や行動に現れるサインを見逃さない

幸せとは手に入れるものではなく、既にこうして生きてることかも。

 幸せとは、家族や友人がいて、空気や水があって、地球という星が差し出してくれるものに支えられて生きていることなのかも。幸せになるのに必要なのは、当たり前の生活の中で既にある幸せに気付き、感謝し、それを味わうことです。
 感謝の気持ちから、ものを大切にしてゴミを減らす、海や山でゴミを捨てない、水や電気を無駄遣いしない、などを小さいころから習慣づけることが大切です。そうした身の回りの小さなことの実践が、環境を大切にする心をはぐくみます。

  環境を大切にする心を育てる

3.家庭でのルール

ルールってだれのためにあるんだろう。

 子どもたちは、家庭でのルールや約束を守ったり破ったりしながら、人との関係の在り方や社会のルールの大切さを学んでいきます。
 家庭のルールには、あいさつ、家に帰る時間、寝る時間などの生活上のルールもあれば、他人に迷惑をかけない、うそをつかないなどといった道徳上のルールもあります。
 しつけに一貫性をもたせ、しっかりと身につけさせるためにも、はっきりしたルールをつくり、親もそれを守りましょう。また、子どもの意見を聞いて子どもとともに一緒にルールをつくるという姿勢も大切です。
  我が家の生活の約束事やルールをつくる

子どもを不幸にしたいなら、何でも買ってあげればいい。

 安易にモノを買い与え過ぎると、子どもは欲しいモノを手に入れるために努力したり、我慢したり、工夫したりすることができなくなります。そして、やたらとモノを欲しがり、自分の気持ちを抑えられなくなってしまいます。
 ブランド品や携帯電話など、友達も持っているからなどといった理由で安易に買い与えないようにしましょう。欲しいと言ったら、なぜそれが必要なのか親子でよく話し合ってください。子どもを思うなら、お金より、心や愛情を使い、親子の関係を深めましょう。

  子どもに我慢を覚えさせる

テレビやビデオは使いよう。

 テレビやテレビゲーム、ビデオにばかりのめり込むと、人間関係をつくる力や他人を思いやる心が育たない、仮想と現実の区別がつかなくなるなど、子どもの健全な心の成長に影を落としかねません。
 特に、極端に暴力的な場面や露骨な性描写が盛り込まれたものは、親の判断で子どもに見せないようにし、それを家庭のルールにしましょう。
 その一方で、子どもに良いと思われる番組を一緒に見るなどして、その内容を話題に子どもとのコミュニケーションを深めましょう。
【平日のテレビ視聴時間(時間・分)】
小学生  2:16
中学生  2:03
高校生  2:07
  子どもが見るテレビやビデオをチェックする 

子どもの健やかな成長のために、睡眠は大切です。

 子どもたちの寝る時間が遅くなり、睡眠時間も短くなっています。深夜テレビや24時間営業の店などが、世の中にあふれています。家庭において、大人の夜型の生活に子どもを巻き込んでいるのではないでしょうか。
 早寝早起きの習慣をつけて、十分な睡眠をとることは、子どもの健やかな成長と生活リズムを確立するためには大切です。家庭で早寝早起きのルールをつくり、習慣をつけるようにしましょう。
  早寝早起きの習慣をつける

子ども部屋を与えるときには、そのルールも与えよう。

 今日、子ども部屋の問題がいろいろと出ています。子どもが部屋に閉じこもると、親の注意が行き届かなくなったり、親子の会話が減ったりします。また、子ども部屋が犯罪の場になってしまう例もあります。
 子ども部屋が子どもの成長に役立つようにするには、ルールが必要です。居間に顔を出してから部屋に入る、子ども部屋に鍵をかけない、友人は部屋に入れる前に親に紹介する、親はその責任として必要なときに子ども部屋に入るなど、子どもの様子をしっかり把握できるように、各家庭で子ども部屋のルールづくりをしましょう。
  子ども部屋を閉ざさない

家事を手伝わせたら、子どもがしっかりしてきた。

 子どもたちの自己中心的な言動や自立の遅れの背景には、自己責任の考え方が身についていないことがあります。日本の親は子どもを甘やかしがちで「自分のことは自分でする」などのしつけがされないことが多いようです。
 家庭でのルールをつくり子どもたちに家事を担わせることは、責任感や自立心、自分が役立っているという気持ち(自己有用感)をはぐくむ上で大切なことです。「後片付けをきちんとさせる」など、小さなことから家事を手伝うことを習慣づけましょう。
  責任感や自立心を育てる

4.思いやり

子どもは親の姿を見て学んでいく。

 親に感謝し、親を思いやる心は、広く他人を思いやる心の基となる大切なものです。まず親が自らの親である祖父母を大切にする姿を見せることを心がけましょう。
 高齢の親の世話について各国の高校生に聞いたところ、日本の高校生は他の国と比べて、「どんなことをしてでも親の面倒をみたい」という回答が少なくなっています。
 大人たちは、自らの親への接し方や、思いやりに欠ける社会の在りようについて、子ども自身から問われているのだということを考えましょう。
  まず、親が率先して祖父母を大切にする

人からもらう幸せだけでなく、人のためにできる幸せもある。

 「バスや電車で席をゆずること」を小・中学生の65%は「していない」「あまりしていない」と答えています。弱い人を思いやり行動する愛情や勇気を持った人に育てるために何ができるでしょう。思いやりの心は、子どものころからの日常における実践を通してはぐぐまれます。まず親が率先してやってみせながら、子どもたちが自然に妊婦や高齢者に席を譲ったり、障害のある人などが困っているときに声をかけたりすることができるようにしつけを行うことが大切です。
  まず、親が率先して人助けをする

人を差別するような子にはなってほしくない。

 親は、子どもがいじめに加わったり、他人を差別し傷つけていることに気付いたときには、それが人間として恥ずかしい行いであることを教える責任があります。
 その際、理屈であれこれ言うより、子どもを愛していること、素敵な人に育ってほしいこと、弱い者をいじめたり差別したりするのを見てショックだったこと、人が傷つくのを喜ぶことに怒りを感じたこと、二度としてほしくないこと、など親としてのほんとうの気持ちを伝える努力をしましょう。
 また、まず親自身が偏見を持たず、差別をしない、許さないということを、子どもたちに示していくことが大切です。
  差別をしない偏見を持たない子に育てる

いじめは人間として恥ずかしい行いだ。

   いじめは、力の弱い子どもや、まじめに努力する子ども、周りに安易に流されないため「異質」とみなされた子どもなどを標的にする卑怯な行いです。悪いのはいじめる子どもであって、「いじめられる側にもそれなりの理由がある」などということは全くの間違いです。
   いくら軽い遊びや悪ふざけ、ジョークのつもりでも、いじめられる側の苦しみ痛みは深刻であることを理解させ、いじめることは、人間として決して許されないことであり、いじめをはやし立てたり傍観したりすることも同じである、ということを家庭の中できちんと話し合いましょう。そして、自分の子どもがいじめをしているとわかったら、すぐに必ずやめさせてください。
   また、いじめる子の中には、親から暴力や強いプレッシャーを受けるなど、家庭でも学校でも居場所がない子どもが多いと言われます。子どもが楽しめるものを見つけ、心が満たされるように配慮するなど、いじめをしない心の環境づくりをしましょう。
  いじめをしない子を育てる

いい本に出会うことは、いい人に出会うことに似ている。

   読書は、想像力や考える習慣を身につけ、豊かな感性や情操、思いやりの心をはぐくむことができます。ですから、テレビやマンガが好きな子にも、本を読む時間を持つように家庭で習慣づけたいものです。
 そのためにも、食事の時間のように「読書の時間」を設ける、親も一緒に本を読むなど工夫し、子どもが読書の楽しさと出会えるきっかけをつくりましょう。
 また、読書を通じて子どもが感じたり考えたりしたことに耳を傾け、話し合うなど、親子の会話を増やし深める契機として読書を活用することも大事です。
  感動する本との出会いを大切にする

みんなそれぞれが世界でたった一つの命なんだ。

   身近な人の死を目の当たりにすることが少なくなったり、殺人を繰り返すテレビやゲームなどで虚構の死に慣れたりして、命の重さやかけがえのなさを感じにくくなっています。
 自然の中の体験活動に参加させたり、動物や草花を大切に育てたりするなど、様々な生き物とその死に触れる機会を意識的に用意し、子どもに生命の尊さ大切さを実感させましょう。
 また、亡くなった人の家族や傷つけられた人の気持ちを想像させるなど、その悲しみがどんなに深いものかを理解させましょう。
  子どもに命の大切さを実感させる

親が子に期待するのと同じくらい、子は親に期待している。

   親が子を思いやるのは当たり前と思われていますが、どれだけの親が実際に子どもを思いやっているでしょう。思いやりとは、子どものことをよく知ることです。よく耳を傾け、子どもの中の世界がどんなものなのかを理解しようとし、たとえ自分の思うとおりでなくてもその子の世界を受け入れることです。
 子どもの存在に感謝し、尊敬を払い、愛情を深めていくことによって、親子の関係は進歩していきます。思いやりの心をもって接すれば、話をするのが安心で楽しくなり、いじめなどの悩みも自然に親に打ち明けられるようになるはずです。
  子どもをほんとうに思いやる

5.個性と夢

自分で考え自分で行動できる人に育ってほしいなら。

 子どもの進む先の障害物を先回りしてどけたり(過保護)、一歩一歩にあれこれ指示をしたり(過干渉)するのではなく、子どもが好きなものを見つけるまで待ち、できるだけ子どもの力を信頼し、それを見守り、力付けましょう。あれこれしないで見守ることは、モノを買ってやったり何かをしてやったりするより、ずっと難しく愛情がいることです。
 また、親は自分が子どものために考えたことは正しいと思いがちですが、必ずしもそうとは限りません。自分の思いや考えを押しつけるのではなく、「お前はどう思う?」と、まず子どもの言い分をじっくり聞き、子どもの気持ちをしっかり受け止めてから、「自分はこう思うんだが。」と、一緒に考え一緒に学んでいく姿勢が大切です。
 子どもが自分で考え、勇気を持って行動し、達成感を味わう、または失敗から学び強くなるチャンスなどを子どもから奪わないように気をつけましょう。
  過保護や過干渉はやめる

同じ子どもなんて一人もいない。

 テストで何点とったか、どれだけ何々ができるかなどと、他の子どもや平均値との比較に目を奪われ、自分の期待から子どもを評価することは、子どもたち一人一人の個性や成長のために良くありません。そういう親の下では、子どもまで相対的な順位ばかりを気にするようになったり、自信をなくしたりしがちです。親は、比較して不安になるのではなく、どんなときも子どもの個性と成長を信じ、ゆっくりゆったり育てたいものです。
  他の子との比較にとらわれない

夢を持つと、人は強くなる。

 今の子どもは冷めていて、将来の夢や希望も持たず、難しい目標はチャレンジする前にあきらめてしまうと言われています。しかし、子どもは子どもなりに夢や希望を持っています。どんなに小さなものであっても、その夢や希望に耳を傾けましょう。
 また、自分の経験や、長い間にわたって苦労して夢を実現した人々の生き方などを折にふれて話しましょう。そして人生の目標は汗を流し、失敗を重ねながら達成していくものだと、励まし、あたたかく見守っていきましょう。親は子どもの応援団です。

  子どもの夢や希望に耳を傾け励ます

ダメなところを責めるより、よいところを増やしていこう。

 子どもに大切なのは、自信と、自分を大切にする力です。それは植物の根のようなもので、深く広く張るほど大きな実りをもたらします。表面的なことにとらわれることなく、その子が大きく育つことを信じて心に豊かな水や栄養を与えましょう。
 そして、その水や栄養となるのが、子どもの良いところを見いだし、ほめることです。叱るべきときは叱り、ほめるべきときはちゃんとほめる。一つ叱ったら三つほめるぐらいのバランスをこころがけましょう。ほめられることで子どもは喜びを感じ、自信や自尊心を育てていくのです。
  良いところを見つけてほめる

学校へ行けない子どもの苦しさって、どんなだろう。

 不登校の子どもは、心の成長の助走期にあり、周囲の人間がゆとりをもって対応する必要があります。早く登校させることにこだわると、本人は登校できない自分と向き合わなければならなくなり、ますます精神的に追いつめられかねません。
 それよりも、家庭を、子どもが安らぎリラックスできる居場所にするよう心がけましょう。そして、不登校を克服する過程でどのように個性を伸ばし成長していくか、という視点を持つなど、ゆとりをもって対応することが大切です。
 また、学校や地域の相談機関などとも、よく連絡をとりましょう。
  不登校にはゆとりをもって対応する

一人でもわかってくれる人がいれば生きていける。

 子どもが、いじめなどで苦しみ、耐えきれずに自ら命を絶つようなことは決してあってっはいけません。
 親は、子どもをよく観察し、よく会話をし、いじめられたり、思い悩んだりしていないか、細心の注意を払いましょう。何かに気付いた時は、落ち着いて子どもの話をじっくりと聞き、気持ちをありのままに受け止め、苦難を乗り越えていく勇気と愛情を与えましょう。
 また、学校もいじめをなくすために真剣に努力しています。担任の先生が対応することで半数近くはいじめられなくなっており、それでいじめが悪化するようなことはわずかしかありません。
 話せばきっとだれかが力になってくれるから、苦しみは自分だけで抱え込まずに、勇気を出して、家族や、先生、友人などに相談するよう、子どもと日ごろからよく話し合っておきましょう。
  子どもの自殺を防止する

「いい学校に行けば幸せになれる」なんて幻想です。

 「いい学校に行き、いい会社に入れば、幸せになれる」という時代は終わりつつあります。これからは、学歴より、自ら学び自ら考える「生きる力」を身につけることが求められます。
 学習塾など、学校以外でも学びの場はありますが、イヤイヤだったり、翌日に疲れが残るような塾通いは、子どもから元気を奪います。さらに、心の成長に大切な友人との遊びや、様々な体験をする機会を減らすことにもつながります。
 また、他の子どもや平均値との比較に目を奪われる家庭の雰囲気は、心の成長をゆがめかねません。子どもを見つめ、その個性に応じてじっくり時間をかけて育てることが大切です。そして、行き過ぎた塾通いがほんとうに子どものためになるのか、もう一度考えてみましょう。
  行き過ぎた塾通いを考え直す

6.ゆとり

子どもは遊びがしごとです。

 遊びは子どもの心の成長にとても大切です。小さいころからの遊びを通して、子どもは感覚を働かせ、運動をし、物をつくり、想像します。しかし、遊びの機会が減るとともに、外で駆けまわるような遊びから、家の中でのひとり遊びが目立つようになりました。
 また、親自身も、「小学校に入ったら勉強が第一、遊びは終わり」というような誤った意識への切り替えをしてはいないでしょうか。 子どもにとって遊びがいかに大切かを認識して、ゆったりのびのびと遊ばせましょう。
  子どもはのびのび遊ばせる

子どもたちの体力が低下しています。

 子どもたちが、外遊びや運動・スポーツで体を積極的に動かすことは、子どもの成長にとって大切です。
 体を動かすことによって得られる体力は、人間の活動の源となるものですが、子どもたちの体力は低下してきています。
 様々な外遊びや多様なスポーツ活動を通じて、基礎的な体力や運動能力を身に付けさせましょう。どうじにスポーツ等で体を動かす楽しさや喜びを体感させ、運動・スポーツに主体的に取り組む態度を養いましょう。

  子どもにはできるだけ外遊びやスポーツをさせる

「疲れた」「疲れた」と言う子どもが増えている。

 今の子どもたちは小さいころから時間に追われ、遊ぶ時間も削られています。遊ぶゆとりのない子どもの中には、「疲れやすい」「なんでもないのにイライラする」といったストレスを訴える子どもがかなりいます。
 子どもは、ゆとりのある自由な時間を与えられることで、初めて心から遊びを楽しんだり創意工夫したりできるし、個性や創造性を伸ばせるのです。親は、勇気を持って子どもたちに時間とゆとりを与えましょう。

  子どもの生活に時間とゆとりを与える

人生で大切なことは、自然の中で学んだ。

 テレビやテレビゲームなど屋内の遊びが増え、自然の中で遊ぶことが少なくなっています。野外で遊ぶことを勧めたり、実際に自然の中に連れ出したりして、動植物や自然と触れ合う楽しさに気付かせましょう。地域の自然に親しむ活動に家族ぐるみで参加したり、時には親から離して子ども一人で参加させましょう。
 自然の中で遊ぶことで、驚きや感動を体験し豊かな感性をはぐぐむとともに、自然や環境を大事にする心や忍耐することの大切さなどを学びます。

  子どもは自然の中で遊ばせる

年上、年下の友達と遊ぶことは、想像以上に大切なことだ。

 年の違う集団の中で、子どもたちは人間関係についてたくさんのことを学びます。年少の子はルールを守ることや我慢することの大切さなどを身につけ、年長の子は思いやりの心や集団をリードしたり役割を果たしたりする責任感を養っていきます。
 身近な地域のボランティア・スポーツ・文化活動、青少年団体の活動などは、それぞれ年の違う集団の中で子どもたちが切磋琢磨する貴重な機会を提供しています。親はその大切さを見直し、子どもたちを積極的に参加させましょう。

  地域の活動など年の違う集団に参加させる

家でやる年中行事にも、深い意味があるんだね。

 正月、ひな祭り、端午の節句、七夕、誕生日、クリスマス、暮れの大掃除など、家庭内の行事では家族とのふれあいが深まるだけでなく、高齢者など世代の異なる様々な人々とのかかわりやつながりができるなど、地域社会へも目が向くきっかけになります。しかも、日本の文化・伝統に親しむとても良い機会でもあります。
 また、初詣や節分で無病息災を祈ったりすることは、人間の力を超えたものへの畏敬の念を深めるなど宗教的な情操をはぐくむことにもなります。

  家庭内の年中行事や催事を見直す

あなたの生き方が、子どもへの最高の教育になる。

 調査によれば、日本の青年は社会に対して不満を持ったとき、「積極的な行動をする」とする割合が国際的に見て極端に低くなっています。
 これまでは勤勉で従順な人が社会から求められましたが、これからは問題を解決するために自分で考え、工夫し、行動する、勇気ある社会人が求められます。自分の会社の利益だけでなく、家庭や地域、そして社会全体にまで目を配り積極的にかかわれる人に育てるために、まず親自身がその大切さを理解し努力・挑戦することが大切です。

  より良い社会をつくる努力を子どもに見せる

平成15年 家庭教育ノート−青森県版 文部科学省 から