第5回野外文芸館全国公募入選作品
テーマ『光』秀逸以下略
 
短歌
河野 裕子 選
天位
光りつつ幹さかしまに下る蟻夕映えながく今日終戦日
田村 三之助 (青森県八戸市)
 終戦記念日は多くの日本人にとって感慨深い日である。その思いが、気の幹を下る蟻の鮮明な描写によって、よく伝わって来る。
地位
陽光にしずくは氷柱をつたい落ち両手で受けんと幼手並ぶ
高木 淑子 (青森県十和田市)
 一読、情景が見えてくる歌である。子どもたちの小さな手がほのぼのと暖か。「幼手」という言葉の使い方にもう一工夫欲しいところ。
人位
石舐むる野あゆの尾鰭ひかりたり囮すばやくおくり出すべし
畠山 参冶 (宮城県仙台市)
 相当の釣りのキャリアを持った作者であろう。鮎の丁寧な観察と、下の句の釣り人ならではの迫力に感心した。

福井 緑 選
天位
征きしまま沙汰なき若駒らを憶ふ萌葱の牧の風光るみち
八木田 順峰 (青森県三戸郡南部町)
 戦時中、多くの馬が徴用され、中国大陸の戦線での過酷な使役に従事しました。敗戦により只の一頭も日本に帰れなかった。下句のやわらかなととのった表現で、上句の物言わぬ馬の運命をいたむ気持ちが際立っている。馬も兵士も若い者の犠牲が大きかった。
地位
いのちへの光と思ふ肝移植の手術の窓は深夜を灯す
斉藤 純子 (青森県弘前市)
 深夜に及ぶ手術の緊張感が窓の灯りから伝わる。それはまさに患者のいのちをつなぐ光である。見上げる作者の祈りと感動が伝わってくる。
人位
平和とは斯くもうつくし生きいきと山車曳く子らの光る汗拭く
田村 三之助 (青森県八戸市)
 世界中のたえまなき紛争に巻き込まれる子供たちの悲惨さを、私たちはテレビによってまざまざと見ている。祭りこそ平和の象徴である。その有り難さにしみじみ感謝しながら、子供達の汗を拭く幸福感に打たれる。
 
俳句
山田 弘子 選
天位
産近し光のような毛糸編む
鈴木 アヤ子 (高知県高知市)
 わが子の誕生を待ちつつ、生まれてくる子の為に編棒を動かす未来の母。毛糸の色は多分純白であろう。それを敢えて「光のような」と表現した。お腹の子に語りかけながら編む、光の色の毛糸。未来の母もまた光となって・・・。
地位
地卵のシールが光る今朝の秋
伊藤 敏子 (北海道札幌市)
 産みたての地卵に貼られたシールの金色が立秋の光を返す。見逃してしまいそうな素材がこのように新鮮な句になることに驚きを覚えた。生産者、消費者いずれにも、この地卵のシールの光には万人の信頼がある。
人位
薄氷のやがて光のゆれはじむ
立崎 ゆき子 (青森県十和田市)
 大気が緩んで春めいていると、冬の間の厚い氷も次第に薄くなってくるので、「薄氷」は春の季題。薄氷の鈍い光も太陽があがってくると忽ち溶けて、水に動きが戻ってくる。静から動への繊細な薄氷の光の変化を捉えて大自然のことわりを捉えた。

新谷 ひろし 選
天位
駒駆けて夏の光となりにけり
若生 まりあ (埼玉県川越市)
 上句「駒駆けて」に三本木平の広々とした空間がみえ、きびしい冬ややませの季節を経てようやく明るい夏のきたことへのよろこびが躍如とする。故郷賛歌。
地位
真緑の光の中へ帰省せり
山崎 観音子 (福島県いわき市)
 土地への賛歌であることは天の句と同じだが、ふるさとを離れていた人が帰省によって得たこころの安らぎがひかりによって象徴されている。
人位
日の光紋白蝶を呼び出せリ
中本 公 (秋田県秋田市)
 蝶にポイントを当てて古里をうたっている。その蝶が日常の紋白蝶というのもいい。かつて菜殻火をみたことがあるが、その菜花畑をとび交う蝶である。
 
川柳
大木 俊秀 選
天位
無袋りんご太陽の子になってゆく
藤本 真喜子 (宮城県古川市)
 虫、病気、外傷、から守ろうと大事大事に育てられる有袋栽培の一方で、太陽の光と熱を存分に浴び、風や雨もしたたかに受けて大きくなる無袋のりんごもある。あの赤は太陽から直接さずかった赤なのだ。「太陽の子になってゆく」とその過程をとらえて風土性も豊か。
地位
ミラーボールへちらり鳥獣戯画光る
多田 幹江 (静岡県静岡市)
 光を反射しながらくるくる回るミラーボールは、キャバレーやダンスホールの雰囲気作りには欠かせない。そのミラーボールに作者は、ちらっとしかしはっきりと鳥獣戯画を見たのだ。うん?それは人間の戯態画なのかも。
人位
わんぱくを素直にさせる掌のほたる
浜中 もとく (青森県十和田市)
 いたずらで乱暴で手のつけられぬわんぱく坊主の掌に、そっと移された一匹のほたる。少年は掌を包むようにして、小さい命の光の点滅を息を殺して見つめる。「かわいいでしょう?」「うん」「きれいだろう?」「うん」昼間のわんぱくはどこに失せたのだろう。

西山 金悦 選
天位
無袋りんご太陽の子になってゆく
藤本 真喜子 (宮城県古川市)
 健やかに、たくましく成長してほしいと願う親としての思いを(無袋りんご)に仮託して成功した句。無袋は過保護の反語。中七の眩しくも明るいフレーズに相乗して、骨太の川柳となった。
地位
ともだちよいつも光っていてほしい
棧 舜吉 (宮崎県宮崎市)
 心を許せる友だちを得ることは人生を豊かにする。互いの長所短所を認め合っての付き合いは美しいもの。中七から下五の句想に誠の友情を見る。さらっと仕上げているが味わい深い。
人位
母さんが一番光るマイホーム
木村 奈生美 (青森県十和田市)
 待望の一戸建て、子どもたちの部屋は二階に、そして花好きの母さんには小さいながらも庭がある。さんさんと降りそそぐ太陽の下、大きく開いた「ひまわり」まさに母さんの輝きに似ている。(一番光る)は一家平安の証しだ。
 
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