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| テーマ『馬』秀逸以下略 |
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| 時田 則雄 選 |
| 天位 |
| 塩なめの鐘を鳴らせば駆けてくる馬たちの髪に春は萌え立つ |
| 佐藤 忠蔵 (青森県三沢市) |
| 評 |
「塩」は命を繋ぐうえで欠くことの出来ないもの。躍動の春とその「塩」をうまく組み合わせた作。情景が鮮明に浮かんで来る。 |
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| 地位 |
| 丘の上の草食む馬を真ん中に入れて二重の秋の虹立つ |
| 藤林 正則 (北海道稚内市) |
| 評 |
長閑な秋の牧場の一コマ。「真ん中に入れて」に作者独自の詩性を感じる。生きていることの喜びも伝わってくる。 |
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| 人位 |
| 生き生きと厩舎掃除をやり終へて戻りゆきたる登校拒否児 |
| 吉田 健一 (福島県いわき市) |
| 評 |
「登校拒否児」、これは深刻な問題だ。馬たちとのふれあい。「厩舎掃除」。この作はその問題解決の一つの糸口を示している。 |
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| 河野 裕子 選 |
| 天位 |
| 子を孕む馬の背中はあたたかし草鞋履かせて検診へゆく |
| 工藤 一郎 (青森県十和田市) |
| 評 |
「草鞋履かせて」に馬を飼っている人らしい愛情がさりげなく出ていて、こころに残った。同じ作者の、「飲み過ぎて寝込みし吾乗せ雪明りの三里の道を橇曳きし馬」もよかった。 |
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| 地位 |
| ひねもすの田鋤きに疲れおとなしき馬の鞍解く月夜明かりに |
| 保泉 きよの (埼玉県比企郡滑川町) |
| 評 |
共に働いた馬への労りと、下の句の詩情。情感のある落ち着いた歌である。 |
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| 人位 |
| 日の丸の旗を背にかけ徴用に従いし馬ついに帰らず |
| 中村 純介 (京都府京都市) |
| 評 |
応募歌には、軍馬の歌がたいへん多かった。徴用されて行った馬たちはついに只の一頭も帰ることは無かったのである。馬は賢くおとなしい動物であり、人のこころが分かる故に、いっそう哀れをさそう。この歌は、一、二句目の具体性がいい。 |
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| 川崎 展宏 選 |
| 天位 |
| 母子馬冷す漣ありにけり |
| 田 荷央 (東京都北区) |
| 評 |
母馬と子馬が水に立っている。その水の漣が岸に寄せて来る。光と共に。静かな眺め。「漣ありにけり」だけで優しさが伝わって来る。漣は優しさそのもの。読む者の心を優しくする。心で音読してみる。何度も。 |
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| 地位 |
| 親馬のどこかに触れて仔馬駆く |
| 大川 恵子 (青森県十和田市) |
| 評 |
親馬仔馬が連れだって駆けながら、仔馬は近づいては親馬に触れる。「どこかに触れて」で、読者にその感触まで伝わって来るようだ。たしかに「どこかに触れて」というように、触れては離れて駆ける仔馬。 |
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| 人位 |
| 馬小屋を閉めて夜涼の刺し子かな |
| 小嶋 豊子 (青森県十和田市) |
| 評 |
木綿を重ねた厚地に一針抜きに糸を通して行く刺子。夜も時の経つにつれて涼しい。灯のもとで刺子の仕事。馬小屋は閉めてある。が、馬はたしかに居る。馬と共に生きる地方の温みのようなものが句に漂う。 |
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| 岡本 眸 選 |
| 天位 |
| 落馬して少年の夏馬臭し |
| 柴田 とろろ (愛知県岡崎市) |
| 評 |
大自然に抱かれて力いっぱいに育つ少年の姿が快い。中七にほのかな抒情の匂いが感じとれるのも良い。 |
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| 地位 |
| 山の方見て静かなる冷し馬 |
| 土井 三乙 (青森県八戸市) |
| 評 |
内容・表現とも過不足なく、よくまとまっている。「山の方見て」に、馬に寄せる作者の暖かな心情が感じとれる。 |
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| 人位 |
| 唐突に兵馬の匂い草いきれ |
| 福嶋 卓爾 (千葉県千葉市) |
| 評 |
顔を煽る草いきれが、遠い戦の日の記憶を蘇らせたのであろう。兵役の経験のある作者だろうか。かなしくも、今は懐かしくもある若き日の記憶である。 |
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| 大木 俊秀 選 |
| 天位 |
| 母の視野子馬駆けるも草食むも |
| 和田 万沙子 (青森県十和田市) |
| 評 |
人位の「仔馬の目」に対して、こちらは母馬の目と視野を詠んだ名吟。親を離れて走りに興じるときも、食欲旺盛に草を食むときも、母馬の視野はいつもわが子をしっかりととらえているのだ。上五に体言を据えて、中七と下五の末尾に「も」という助詞を連ね、中と下を「対」にした。内容、リズム、いずれも完璧な作品として推したい。 |
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| 地位 |
| 洗い馬貴公子然と海を見る |
| 蝦名 登美子 (青森県十和田市) |
| 評 |
河口に近い川岸であろう。洗われて小ざっぱりした若駒が海を見ている。その姿のなんと凛々しいことよ。まるで身分の高貴な家柄の御曹司のようで、すぐれた風采に高い気品が漂う。「貴公子然」がドンピシャでその上に海へのひろがりを持たせたところがうまい。 |
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| 人位 |
| 少年を好きでたまらぬ仔馬の眼 |
| 齊藤 (青森県弘前市) |
| 評 |
「馬」というとよく「目」が詠まれる。そのとき安直に用いられる形容詞が「優しい」である。この句は、その「優しい」から二歩も三歩も踏み出して「少年を好きでたまらぬ」ととらえた。句はこのように仕立てたい。 |
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